FA業界用語辞典:製造現場でよく使われる専門用語100選

はじめに

ファクトリーオートメーション(FA)業界は、製造現場の自動化と効率化を推進する重要な分野です。しかし、この業界には数多くの専門用語が存在し、初心者にとっては理解が困難な場合があります。本記事では、製造現場で頻繁に使用される基本的な用語から、IoTやAIなどの最新技術に関連する用語まで、実例とともに分かりやすく解説します。

キーエンスをはじめとするFA機器メーカーの製品を理解し、効果的に活用するためにも、これらの用語を正しく理解することは不可欠です。

基本的なFA用語

FA(ファクトリーオートメーション)

工場の生産機能を構成する要素(生産機器、搬送機器、保管機器など)および生産行為(生産計画、生産管理など)を統合化し、総合的に自動化することです。人的作業を機械に置き換えることで、生産性向上、品質安定化、コスト削減を実現します。

実例: 自動車製造ラインでの溶接ロボット、組み立てロボット、検査装置の連携システム

PLC(プログラマブルロジックコントローラ)

製造装置や生産ラインの制御を行うコンピュータです。従来のリレー回路に代わって、プログラムによって制御ロジックを実現します。耐環境性に優れ、工場の厳しい環境下でも安定動作します。

実例: コンベアベルトの速度制御、温度管理システム、安全装置の制御

HMI(ヒューマンマシンインターフェース)

人間と機械の間の情報交換を行うインターフェースです。タッチパネルディスプレイが一般的で、オペレータが機械の状態を監視し、操作指示を入力できます。

実例: 製造ラインの運転状況表示、アラーム表示、生産数量の設定画面

SCADA(スキャダ)

Supervisory Control and Data Acquisitionの略で、製造設備のデータ収集と監視制御を行うシステムです。複数の制御システムを統合的に監視し、リアルタイムでデータを収集・表示します。

実例: 化学プラントの温度・圧力監視、電力系統の監視制御、水処理施設の運転管理

生産管理関連用語

MES(製造実行システム)

Manufacturing Execution Systemの略で、生産現場の「ヒト・モノ・カネ」を管理するシステムです。生産計画から実績管理まで、製造工程全体を可視化し、最適化を図ります。

実例: 作業指示書の配信、進捗管理、品質データ収集、設備稼働率監視

トレーサビリティ

製品の生産から流通、消費に至るまでの履歴を追跡できる仕組みです。原材料の調達先、製造工程、検査結果、出荷先などの情報を記録・管理します。

実例: 食品の原材料追跡、自動車部品のロット管理、医薬品の製造履歴管理

ERP(企業資源計画)

Enterprise Resource Planningの略で、企業の経営資源(人材、資金、設備、情報など)を統合的に管理するシステムです。生産、販売、財務、人事などの業務を一元管理します。

実例: 受注から出荷までの一貫管理、在庫最適化、原価計算、売上分析

JIT(ジャストインタイム)

必要なものを、必要な時に、必要な分だけ生産・調達する生産方式です。在庫を最小限に抑え、無駄を排除することで効率化を図ります。

実例: トヨタ生産方式、部品の同期納入、小ロット多頻度生産

センサ・計測関連用語

光電センサ

光を利用してワークの有無や位置を検出するセンサです。投光器から発射された光が受光器で受光されるかどうかで判定します。透過型、反射型、回帰反射型があります。

実例: コンベア上の製品検出、包装機での製品カウント、自動ドアの人感知

近接センサ

金属物体の接近を非接触で検出するセンサです。高周波発振回路を利用し、金属が近づくと発振が変化することを利用します。

実例: 工作機械の原点復帰、エレベータのドア開閉検知、自動車のエンジン回転検出

変位センサ

対象物までの距離や変位量を測定するセンサです。レーザー光を利用したものが一般的で、高精度な測定が可能です。

実例: 製品の寸法測定、表面の凹凸検査、位置決め制御

画像センサ

カメラで撮影した画像を解析して、対象物の有無、位置、形状、色などを判定するセンサです。複雑な検査が可能で、AI技術の導入も進んでいます。

実例: 外観検査、文字認識、バーコード読み取り、ロボットの視覚システム

ロボット・自動化関連用語

産業用ロボット

製造現場で使用される自動化機械です。多関節アーム型が一般的で、溶接、塗装、組み立て、搬送などの作業を行います。プログラムによって動作を制御します。

実例: 自動車の溶接ライン、電子部品の実装作業、重量物の搬送

協働ロボット(コボット)

人間と同じ作業空間で安全に協働できるロボットです。従来の産業用ロボットと異なり、安全柵なしで人間と一緒に作業できます。

実例: 部品の組み立て補助、検査作業の支援、軽作業の自動化

AGV(無人搬送車)

Automated Guided Vehicleの略で、工場内で自動的に物品を搬送する無人車両です。磁気テープ、レーザー、カメラなどを使って経路を認識します。

実例: 部品の工程間搬送、完成品の倉庫への運搬、原材料の供給

ピッキングシステム

倉庫や工場で、指定された商品や部品を自動的に取り出すシステムです。ロボットアームやコンベアシステムと組み合わせて使用されます。

実例: EC物流センターの商品ピッキング、部品倉庫の自動出庫、薬局の調剤支援

最新技術関連用語

IoT(モノのインターネット)

Internet of Thingsの略で、様々な機器がインターネットに接続され、データの収集・交換を行う技術です。製造現場では設備の稼働状況や環境データの収集に活用されます。

実例: 設備の予知保全、エネルギー使用量の監視、生産データのリアルタイム収集

エッジコンピューティング

データ処理をクラウドではなく、データが発生する現場(エッジ)で行う技術です。リアルタイム性が向上し、通信負荷を軽減できます。

実例: 製造ラインでのリアルタイム品質判定、設備異常の即座な検知、自動運転車の制御

デジタルツイン

現実世界の物理的なシステムをデジタル空間に再現する技術です。シミュレーションや予測分析に活用され、製品開発や生産最適化に貢献します。

実例: 製品設計のシミュレーション、生産ラインの最適化、設備メンテナンスの計画

スマートファクトリー

IoT、AI、ロボットなどのデジタル技術を活用して、自動化・最適化された次世代工場です。データドリブンな意思決定により、生産性と品質の向上を実現します。

実例: 完全自動化された生産ライン、AI による品質予測、自律的な生産計画調整

AI(人工知能)

人間の知的活動をコンピュータで模倣する技術です。製造業では画像認識、異常検知、予測分析などに活用されています。

実例: 外観検査の自動化、設備故障の予知、生産計画の最適化

予知保全

設備の状態を常時監視し、故障が発生する前に適切なメンテナンスを実施する手法です。IoTセンサとAI分析を組み合わせて実現します。

実例: 振動・温度データによる軸受け交換時期の予測、モーター電流値による異常検知

品質管理・安全関連用語

SPC(統計的工程管理)

Statistical Process Controlの略で、統計的手法を用いて製造工程を管理し、品質の安定化を図る手法です。管理図を使って工程の異常を早期発見します。

実例: 寸法測定データの管理図作成、不良率の統計的監視、工程能力の評価

ポカヨケ

作業者のうっかりミスを防止するための仕組みです。物理的な制約や警告システムにより、間違った作業ができないようにします。

実例: 部品の向きを間違えると組み立てできない治具、重要工程での確認ボタン、色分けによる識別

安全ライトカーテン

光のカーテンを形成し、人が危険エリアに侵入すると機械を緊急停止させる安全装置です。従来の安全柵に代わる安全対策として普及しています。

実例: プレス機械の安全対策、ロボット作業エリアの保護、自動倉庫の安全確保

フェールセーフ

システムに異常が発生した場合、安全な状態に移行する設計思想です。故障時でも人や設備に危害を与えないようにします。

実例: 電源断時の機械自動停止、センサ異常時の安全側動作、通信断時の緊急停止

HACCP(ハサップ)

Hazard Analysis and Critical Control Pointsの略で、食品の安全性を確保するための衛生管理手法です。危害要因を分析し、重要管理点を設定します。

実例: 食品製造ラインの温度管理、異物混入防止システム、清浄度管理

通信・ネットワーク関連用語

フィールドバス

製造現場の機器間を接続するデジタル通信ネットワークです。従来のアナログ信号に代わり、デジタル通信により高精度で高速な情報伝送を実現します。

実例: Profibus、DeviceNet、CC-Link、EtherCAT

OPC UA

Open Platform Communications Unified Architectureの略で、産業用通信の標準規格です。異なるメーカーの機器間でのデータ交換を可能にします。

実例: PLC間のデータ交換、MESとの連携、クラウドシステムとの接続

5G

第5世代移動通信システムで、高速・大容量・低遅延の通信を実現します。製造業では遠隔制御やリアルタイム監視に活用されます。

実例: 遠隔地からのロボット制御、リアルタイム映像監視、AR/VRを活用した作業支援

TSN(時刻同期ネットワーク)

Time-Sensitive Networkingの略で、リアルタイム性が要求される産業用ネットワークの標準規格です。高精度な時刻同期により、確定的な通信を実現します。

実例: 高精度モーション制御、同期制御システム、リアルタイム品質監視

まとめ

FA業界の専門用語は、製造現場の自動化と効率化を支える重要な概念です。基本的なPLCやHMIから、最新のIoTやAI技術まで、これらの用語を理解することで、製造業のデジタル変革をより深く理解できるようになります。

キーエンスをはじめとするFA機器メーカーは、これらの技術を統合したソリューションを提供しており、製造現場の課題解決に貢献しています。技術の進歩とともに新しい用語も生まれ続けているため、継続的な学習が重要です。

製造業に携わる全ての方が、これらの用語を正しく理解し、効果的に活用することで、より効率的で安全な製造現場の実現につながることを期待します。FA技術の発展は止まることなく、今後もスマートファクトリーの実現に向けて、新たな技術と用語が登場し続けるでしょう。

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