キーエンス三次元測定機「WM-6000」活用事例集:最大25m測定を活かした大型部品検査

はじめに

製造業における品質管理の重要性が高まる中、大型部品の精密測定に対するニーズが急速に拡大しています。従来の三次元測定機では対応が困難だった大型ワークの測定を可能にするキーエンス「ワイドエリア三次元測定機 WM-6000シリーズ」が注目を集めています。

本記事では、WM-6000シリーズの代表的なモデルであるWM-6225を中心に、その技術的特徴と実際の活用事例について詳しく解説します。自動車業界、航空宇宙産業、建設機械分野での導入事例を通じて、大型部品検査における革新的なソリューションの価値を探ります。

WM-6000シリーズの製品概要と技術的特徴

基本仕様と測定能力

キーエンスWM-6225は、幅25m×奥行11m×高さ12.5mという広大な測定範囲を実現したワイドエリア三次元測定機です。この測定範囲により、従来は分割測定が必要だった大型部品を一度に測定することが可能になりました。

主要仕様(WM-6225)

•測定範囲:幅25,000mm × 奥行11,000mm × 高さ12,500mm

•カメラユニット重量:約7.2kg

•最小表示単位:距離0.001mm、角度0.001°

•使用環境:温度0~40℃、湿度最大80%RH

2種類のプローブシステム

WM-6225は、測定対象に応じて選択できる2種類のプローブを搭載しています。

接触プローブ

•指示誤差精度:±(28 + 5L/1000)μm(ISO 10360-2準拠)

•重量:約600g

•対応スタイラス:M5

•高精度な点測定に適用

レーザスキャンプローブ

•システム精度:±(50 + 5L/1000)μm

•重量:約1kg

•スキャン速度:最大240万点/秒

•繰返精度:0.025mm

•高速な面測定に適用

ワイヤレス通信とモビリティ

WM-6225は完全ワイヤレス設計を採用しており、測定現場での自由度を大幅に向上させています。

専用リチウムイオンバッテリーパック(3250mAh)により、約6時間の連続使用が可能で、現場での長時間測定にも対応できます。

自動車業界での活用事例

大型車体パネルの品質検査

自動車製造業では、車体パネルの寸法精度が車両の品質と安全性に直結します。従来の測定方法では、大型パネルを複数の小さなエリアに分割して測定する必要があり、測定時間の長期化と精度の課題がありました。

WM-6225の導入により、車体パネル全体を一度に測定することが可能になりました。25mの測定範囲により、大型SUVやトラックのパネルも分割することなく測定でき、測定時間の大幅な短縮と精度向上を実現しています。

導入効果

•測定工程の簡素化による作業効率向上

•一体測定による精度向上

•測定データの一元管理による品質管理の強化

•作業者の負担軽減

エンジンブロック・トランスミッション検査

大型エンジンブロックやトランスミッションケースの測定においても、WM-6225の広い測定範囲が威力を発揮しています。特に商用車や建設機械用の大型エンジンでは、従来の測定機では対応が困難でした。

接触プローブによる高精度測定とレーザスキャンプローブによる高速測定を使い分けることで、効率的な品質検査体制を構築できています。

技術的メリット

•大型部品の一体測定による測定精度向上

•プローブの使い分けによる効率的測定

•ワイヤレス設計による測定位置の自由度向上

•リアルタイムデータ取得による迅速な品質判定

電気自動車バッテリーケース検査

電気自動車の普及に伴い、大型バッテリーケースの精密測定需要が急増しています。バッテリーケースは安全性の観点から極めて高い寸法精度が要求され、従来の測定方法では十分な検査体制を構築することが困難でした。

WM-6225による測定では、バッテリーケース全体の形状測定を短時間で実施でき、安全性確保に必要な品質管理体制を実現しています。

航空宇宙産業での活用事例

航空機主翼構造部品の検査

航空宇宙産業では、安全性への要求が極めて高く、構造部品の寸法精度は厳格に管理されています。航空機の主翼構造部品は大型かつ複雑な形状を持ち、従来の測定機では全体の形状を一度に測定することが困難でした。

WM-6225の導入により、主翼構造部品全体の三次元形状を高精度で測定することが可能になりました。レーザスキャンプローブによる高速測定により、複雑な曲面形状も効率的に測定できます。

品質保証への貢献

•構造部品全体の一体測定による品質保証

•複雑形状の高精度測定

•測定データのトレーサビリティ確保

•国際航空規格への適合性確認

ロケット燃料タンクの精密測定

宇宙開発分野では、ロケット燃料タンクの寸法精度が打ち上げ成功に直結します。大型燃料タンクの測定では、WM-6225の広い測定範囲と高精度が重要な役割を果たしています。

接触プローブによる重要部位の精密測定と、レーザスキャンプローブによる全体形状の測定を組み合わせることで、包括的な品質検査を実現しています。

安全性向上への効果

•燃料タンク全体の形状精度確保

•溶接部や接合部の精密測定

•材料特性に応じた測定手法の選択

•厳格な品質基準への適合

人工衛星構造体の検査

人工衛星の構造体は軽量化と高強度を両立する必要があり、複雑な形状と厳しい寸法公差が要求されます。WM-6225による測定では、衛星構造体全体の形状測定を効率的に実施できます。

宇宙環境での使用を前提とした部品では、地上での品質検査が極めて重要であり、WM-6225の高精度測定がミッション成功に貢献しています。

建設機械分野での活用事例

大型油圧ショベルアームの検査

建設機械の油圧ショベルアームは、過酷な作業環境での使用に耐える強度と精度が要求されます。大型機種のアームは長さが10m以上に及ぶことも多く、従来の測定機では全体の形状測定が困難でした。

WM-6225の25m測定範囲により、大型ショベルアーム全体を一度に測定することが可能になりました。溶接部の変形や組み立て精度を包括的に評価でき、製品の安全性向上に貢献しています。

安全性向上への取り組み

•アーム全体の形状精度確保

•溶接変形の定量的評価

•組み立て工程の品質管理強化

•疲労強度に影響する形状欠陥の早期発見

ブルドーザーブレードの品質管理

ブルドーザーのブレードは土砂の押し出し性能に直結する重要部品です。大型ブレードの平面度や角度精度は作業効率に大きく影響するため、高精度な測定が必要です。

WM-6225による測定では、ブレード全体の平面度測定を短時間で実施でき、製造工程での品質管理を効率化しています。レーザスキャンプローブによる高速測定により、生産ラインでの全数検査も可能になりました。

品質管理システムの革新

•ブレード全体の平面度測定

•製造工程での迅速な品質判定

•不良品の早期発見による歩留まり向上

•顧客要求仕様への適合性確認

クレーン旋回体の精密測定

大型クレーンの旋回体は、安全性の観点から極めて高い精度が要求されます。旋回体の形状精度は、クレーンの安定性と作業精度に直接影響するため、厳格な品質管理が必要です。

WM-6225の広い測定範囲により、旋回体全体の形状測定を一度に実施でき、従来は困難だった大型部品の包括的な品質評価が可能になりました。

技術的優位性

•旋回体全体の一体測定

•複雑形状部品の高精度測定

•組み立て精度の定量的評価

•安全基準への適合性確認

測定精度の検証と技術的評価

公式仕様に基づく精度性能

WM-6225の測定精度は、使用するプローブによって異なる特性を示します。キーエンス公式仕様によると、以下の精度性能が保証されています。

接触プローブ(WM-P6000)

•指示誤差精度:±(28 + 5L/1000)μm(ISO 10360-2準拠)

•適用範囲:高精度が要求される点測定

•測定対象:穴径、段差、平面度など

レーザスキャンプローブ

•システム精度:±(50 + 5L/1000)μm

•繰返精度:0.025mm

•適用範囲:高速測定が要求される面測定

•測定対象:自由曲面、複雑形状など

測定環境と精度への影響

WM-6225の測定精度は、使用環境によって影響を受けます。公式仕様では、使用環境条件として温度0~40℃、湿度最大80%RH(結露なきこと)が規定されています。

大型部品の測定では、温度変化による熱膨張の影響を考慮する必要があり、測定環境の管理が精度確保の重要な要素となります。

国際規格への適合性

WM-6225は、三次元測定機の国際規格であるISO 10360-2に準拠した精度評価を実施しています。この規格適合により、測定結果の国際的な信頼性が確保されています。

規格適合の意義

•測定結果の国際的な通用性

•品質管理システムへの組み込み

•顧客要求仕様への適合性証明

•トレーサビリティの確保

導入時の考慮事項と成功要因

測定環境の整備

WM-6225の性能を最大限に発揮するためには、適切な測定環境の整備が重要です。

環境条件の管理

•温度管理:0~40℃の範囲での安定化

•湿度管理:80%RH以下(結露防止)

•振動対策:測定精度に影響する振動の除去

•照明条件:レーザスキャンプローブの性能確保

操作者の教育・訓練

WM-6225は高度な測定機器であり、適切な操作技術の習得が必要です。

教育プログラムの要素

•基本操作方法の習得

•プローブ選択の判断基準

•測定計画の立案方法

•データ解析・評価技術

•メンテナンス手順の理解

データ活用体制の構築

測定データを効果的に活用するためには、組織的な体制構築が重要です。

データ活用の仕組み

•測定データの標準化

•品質管理システムとの連携

•不良原因の迅速な特定

•改善活動への活用

•顧客への品質証明

投資対効果の評価

WM-6225の導入効果は、測定時間の短縮、品質向上、人員配置の最適化など多面的に評価する必要があります。導入コストについては、測定対象や導入規模によって大きく異なるため、個別の見積もりが必要です。

効果測定の観点

•測定工程の効率化

•品質管理レベルの向上

•不良品発生率の削減

•顧客満足度の向上

•競争力の強化

まとめ

キーエンス WM-6000シリーズは、従来の三次元測定機では対応が困難だった大型部品の測定を可能にする革新的なソリューションです。25mという広大な測定範囲と、接触・非接触の2種類のプローブシステムにより、多様な測定ニーズに対応できます。

自動車業界、航空宇宙産業、建設機械分野での活用事例が示すように、WM-6225は大型部品の品質管理において重要な役割を果たしています。測定時間の短縮、精度向上、作業効率化など、多面的な効果により、製造業の競争力強化に貢献しています。

導入を検討する際は、測定環境の整備、操作者の教育、データ活用体制の構築など、総合的な観点からの検討が重要です。適切な導入計画により、WM-6225の持つ高い性能を最大限に活用し、品質管理の革新を実現できるでしょう。

製造業における大型部品の品質管理は、今後ますます重要性を増していきます。WM-6000シリーズのような先進的な測定技術の活用により、より高い品質レベルの実現と、国際競争力の強化が期待されます。

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