キーエンス営業OBが語る:成果を上げる営業担当者と普通の営業担当者の決定的な違い
はじめに
キーエンスの営業現場で長年見てきた「トップ営業」と「普通の営業」には、明確な違いが存在します。本記事では、キーエンス営業OBとしての視点から、両者の行動、思考、習慣、日報内容、上司との関わり方、そして実際の1日のスケジュールの違いを比較し、再現可能な工夫に焦点を当てて解説します。
1. 行動量の「質」と「量」:単なる量ではない、戦略的な行動
キーエンス営業において行動量は重要ですが、トップ営業はその「量」と「質」に大きな違いがありました。
1.1. 絶対量の違い
トップ営業は、訪問件数、電話件数、提案書作成数など、あらゆる指標で普通の営業を圧倒していました。「量をこなせば質に転化する」というキーエンスの考え方を体現し、1分1秒を無駄にせず活動していました。
1.2. 行動の「質」の違い
単に量をこなすだけでなく、行動の「質」にも徹底的にこだわっていました。特に、アポイントの取り方と移動の効率化が顕著でした。地理的に近い顧客を効率的に回り、移動時間を最小限に抑え、顧客との対話時間を最大化していました。訪問前には顧客の事業内容や業界動向を徹底的に調べ、明確な目的意識を持って商談に臨んでいました。スキマ時間も次の商談準備や情報収集に充て、常に営業活動を行っていました。
1.3. 顧客との関係構築
トップ営業は、単なる製品の売り込みではなく、顧客のビジネス全体に貢献できる情報提供や提案を心がけ、信頼関係を構築していました。顧客の「困りごと」に迅速かつ的確に対応し、「困った時のキーエンス」という評価を得ていました。顧客のキーパーソンだけでなく、現場の担当者とも積極的にコミュニケーションを取り、真のニーズを深く理解していました。
2. 思考と学習:模倣と徹底の精神、そして自己分析の深さ
トップ営業の思考プロセスは、「模倣」と「徹底」の精神、そして深い自己分析能力が特徴です。
2.1. まずは「まねる」ことから始める思考
トップ営業は、キーエンスの体系化された営業の「型」を素直に受け入れ、忠実に実行することから始めました。先輩や上司の成功事例を徹底的に模倣し、その「型」の有効性を自ら証明していました。これは「守破離」の「守」の段階を徹底するものです。
2.2. 上司や同僚から「盗む」姿勢
上司や同僚の優れた点を積極的に「盗む」ことに長けていました。上司からのフィードバックを自身の成長のためのアドバイスと捉え、同僚の成功事例からも積極的に学び、自身の引き出しを増やしていました。常に周囲から学び、吸収しようとする貪欲な姿勢を持っていました。
2.3. 「やってこい」を徹底する実行力
上司からの指示に対して、「難しい」「時間がない」といった言い訳をせず、文字通り「徹底的に実行する」ことに全力を注ぎました。困難な課題でも諦めず、様々な方法を試行錯誤しながら結果を出していました。結果を出すことへの強いコミットメントとプロ意識を持っていました。
2.4. 徹底的な自己分析とフィードバックの活用
商談の成功・失敗に関わらず、常に「なぜ」を問い続ける自己分析の習慣を持っていました。成功要因を言語化し、失敗からは具体的な改善点を洗い出していました。上司や同僚からのフィードバックを自身の成長を加速させるための貴重な情報源として活用し、素直に受け入れ、改善に繋げていました。
3. 習慣と日報内容:成果に繋がるルーティン
日々の習慣と日報の内容にも、トップ営業と普通の営業の間には明確な差がありました。
3.1. 成果に直結する習慣
トップ営業は、意識の高さだけでなく、それを具体的な「習慣」として日々の業務に落とし込んでいました。毎朝早く出社し、その日の訪問先や提案内容を最終確認し、顧客の最新情報をチェックしていました。商談後には感謝のメールや追加情報を提供し、顧客との信頼関係を深めていました。これらの「小さな積み重ね」が、長期的な関係へと繋がっていました。
3.2. 日報内容の「深さ」と「具体性」
トップ営業の日報は、その「深さ」と「具体性」において、普通の営業の日報とは一線を画していました。商談の具体的な内容、商談の「なぜ」、次のアクションプラン、自己評価と改善点などが詳細に記述されていました。日報を通じて自身の営業活動を客観的に分析し、常に改善のサイクルを回していました。日報は自己成長のための「学習ノート」であり、上司にとっては部下を育成するための「指導書」としての役割を果たしていました。
3.3. 日報を「未来への投資」と捉える
トップ営業にとって日報は、自身の営業活動をPDCAサイクルに落とし込み、未来の成果へと繋げるための重要な「投資」でした。日報作成の時間を客観的に「Check」し、次の「Action」を具体的に「Plan」する貴重な時間と位置づけ、高速でPDCAサイクルを回すことで、自身の営業スキルを日々磨き上げていました。
4. 上司との関わり方:信頼関係と成長のサイクル、そして戦略的パートナーシップ
上司との関わり方も、トップ営業と普通の営業を分ける重要な要素でした。
4.1. 上司を「使いこなす」トップ営業
トップ営業は、上司を単なる指示を出す存在としてではなく、自身の成長をサポートしてくれるパートナーとして捉え、積極的に関わっていました。自ら上司に相談し、アドバイスを求め、時には上司を巻き込んで商談を進めていました。上司の経験や知識、社内での影響力を最大限に活用し、自身の営業活動の幅を広げていました。上司からのフィードバックも建設的に受け止め、すぐに自身の行動に反映させていました。
4.2. 上司の評価コメントの違い
トップ営業に対する上司の評価コメントは、単なる成果の賞賛に留まらず、そのプロセスや思考の深さに言及するものが目立ちました。これは、トップ営業が日々の業務において、単に結果を出すだけでなく、その背景にある思考や工夫、そして試行錯誤のプロセスを上司に明確に伝えていたからこそでした。上司は、彼らの成長を具体的に認識し、さらなる高みへと導くためのサポートを惜しみませんでした。
4.3. 上司を「成長の触媒」として活用する
トップ営業は、上司を自身の成長を加速させるための「触媒」として捉え、自ら積極的にフィードバックを要請していました。自身の成功体験やノウハウをチーム内で積極的に共有することで、チーム全体のレベルアップにも貢献していました。このようなチームへの貢献姿勢も、上司からの信頼をさらに厚くし、彼らの成長を後押しする要因となっていました。
5. 実際の1日のスケジュールの違い:時間の使い方に現れるプロ意識
トップ営業と普通の営業では、1日の時間の使い方も大きく異なっていました。彼らは時間を「有限の資源」と捉え、その最大限の活用を常に意識していました。
5.1. トップ営業の1日(例):戦略的な時間配分とスキマ時間の活用
トップ営業は、内勤日と訪問日のそれぞれにおいて、常に効率を最大化することを意識して行動していました。
【訪問日】
•顧客訪問の集中: 1日5~10件以上の顧客訪問を目標とし、地理的に近い顧客を効率的に回ることで移動時間を最小限に抑えます。同一企業の複数部署をまとめて訪問するなど、移動効率を最大化する工夫を徹底します。
•商談の質: 訪問先では、単なる製品説明に留まらず、顧客の潜在的な課題やニーズを深く引き出し、キーエンスの製品がどのようにその課題を解決できるかを具体的に提案します。
•スキマ時間の活用: 移動中の昼食や、アポイントとアポイントの間のわずかな時間も無駄にせず、次の商談準備、顧客からのメール返信、業界ニュースのチェックなどに充てます。
【内勤日】
•準備と学習: 電話によるアポイント取得、商品知識の習得などを集中的に行います。アウトバウンドの電話活動で商品PRの目標件数を設定し、新製品の勉強会やテストなども組み込みます。
•戦略立案: 前日の訪問結果を基にした日報の分析、訪問計画の策定、上司との面談などを通じて、訪問の質を高めるための準備や戦略立案に集中します。
トップ営業は、訪問日には顧客との対話に最大限の時間を割き、内勤日にはその訪問の質を高めるための準備や分析、戦略立案に集中していました。彼らの行動は、常に「今、何ができるか」という問いに基づいています。
5.2. スケジュール管理の徹底
トップ営業は、アポイントのスケジュール管理においても、徹底した最適化を図っていました。自身の移動時間や効率を最大限に考慮し、戦略的にスケジュールを組んでいました。予期せぬスケジュールの変更にも柔軟に対応し、常に「次に何をすべきか」を考え、行動に移すことで、どんな状況でも成果に繋げようと努力していました。
6. 再現可能な工夫:意識ではなく「仕組み」で成果を出す
トップ営業が成果を出し続けるのは、意識の高さだけでなく、誰でも真似できる「再現可能な工夫」を日々の業務に落とし込んでいたからです。
6.1. 徹底的な「型」の遵守と応用
キーエンスが長年培ってきた営業の「型」を徹底的に遵守し、その上で顧客の状況や自身の経験に合わせて柔軟に応用していました。「型」は思考停止のためのものではなく、より大きな成果を出すための「土台」でした。
6.2. 効率的な情報収集と活用
常に最新の情報を効率的に収集し、それを営業活動に活用していました。社内のナレッジ共有システムや過去の成功事例データベースなど、あらゆる情報源を駆使し、自身の担当顧客や商談にどのように活かせるかを常に考えていました。
6.3. タイムマネジメントの徹底
時間の使い方において非常に厳格でした。あらゆるタスクに明確な時間を割り当て、それを厳守していました。移動時間の有効活用も得意とし、常に時間を最大限に活用することが成果に繋がるという意識が徹底されていました。
6.4. 顧客の「真の課題」を見抜くヒアリング力
単に顧客の要望を聞くだけでなく、その背景にある「真の課題」を見抜くヒアリング力に長けていました。多角的な質問を投げかけ、顧客のビジネス全体を理解しようと努め、キーエンスの製品がどのように貢献できるかを具体的に提案することで、「ソリューションパートナー」としての地位を確立していました。
6.5. 提案の「具体性」と「価値」の明確化
トップ営業の提案書は、常に「具体的」であり、顧客にとっての「価値」が明確に示されていました。製品のスペックだけでなく、導入することで顧客がどのようなメリットを得られるのか、数値的な根拠を交えながら具体的に説明していました。
7. 普通の営業が改善すべきポイント:言い訳をせず、量を質に転化する
普通の営業が成果を上げるためには、以下の点を改善する必要があります。
7.1. 言い訳に逃げない
「難しい」「時間がない」「人脈がない」といった言い訳をせず、結果を出すことに徹底的にコミットする姿勢が必要です。困難な状況でも、どうすれば達成できるかを考え、行動に移すプロ意識を持つべきです。
7.2. 量を質に転化する
特に若手は、まずは圧倒的な行動量をこなし、成功している先輩や上司のやり方を徹底的に真似ることから始めるべきです。量が質に転化するというキーエンスの基本を信じ、実践することが重要です。
7.3. ベテランは「誰に何を」を考える
ベテラン営業は、単に量をこなすだけでなく、「誰に、何を、どのように提案すれば、最大の成果が得られるか」という戦略的な視点を持つべきです。顧客の深掘り、潜在ニーズの発見、そして最適なソリューション提案に注力することで、より高い成果を目指せます。
8. まとめ:再現可能な「仕組み」としてのキーエンス営業
キーエンスのトップ営業は、単に個人の能力が高いだけでなく、その行動、思考、習慣、上司との関わり方、そして時間の使い方において、再現可能な「仕組み」を構築し、それを徹底的に実行していました。彼らは、キーエンスが長年培ってきた営業の「型」を遵守し、効率的な情報収集と活用、徹底したタイムマネジメント、顧客の真の課題を見抜くヒアリング力、そして価値を明確にする提案力を兼ね備えていました。
普通の営業がこれらの「仕組み」を学び、日々の業務に落とし込むことで、必ずや成果を上げることができます。意識の高さだけでなく、具体的な行動と習慣を変えること。そして、上司や同僚から積極的に学び、自己分析を怠らないこと。これらが、キーエンスで成果を上げる営業担当者になるための鍵となります。本記事が、皆様の営業活動の一助となれば幸いです。