キーエンスのレーザーマーカー導入事例まとめ:現場で成果を出す5つのケーススタディ
製造現場でトレーサビリティ強化や印字品質の安定化、ランニングコスト削減といった課題が高まる中、レーザーマーカーの導入が注目されています。特にキーエンスの3-Axisレーザーマーカーは、ワークの位置ズレや段差にも強く、多品種・少量生産の現場に適した装置として評価されています。ここでは代表的な製品型番を確認しながら、実際の導入シーンをイメージできる5つの事例を紹介します。
1. レーザーマーカーとは
レーザーマーカーは、レーザー光を用いて金属や樹脂などの表面に文字やロゴ、2次元コードなどを非接触でマーキングする装置です。インクや溶剤を使わないためランニングコストが抑えられ、メンテナンスも比較的容易です。キーエンスのラインアップにはハイブリッドレーザーのMD-Xシリーズ、ファイバーレーザーのMD-Fシリーズ、UVレーザーのMD-Uシリーズ、CO₂レーザーのMD-Tシリーズ、紙や樹脂向けのCO₂レーザーML-Zシリーズなどがあり、素材や用途に応じて選べます。製品の詳細は公式カタログで確認すると良いでしょう。
2. 導入前の課題
企業がレーザーマーカー導入を検討する背景には、インクジェット印字の消えやにじみ、治具段取り替えのコスト増、2次元コード読み取り不良によるトレーサビリティの欠損、素材ごとに異なる印字装置の使い分け、目視検査に依存した歩留まりのばらつきといった課題があります。キーエンスのレーザーマーカーは3-Axis制御や自動焦点調整機能、検査システムとの連携により、これらの問題を包括的に改善することが期待できます。
3. 導入事例①:自動車部品メーカー
アルミダイカスト製のエンジン部品にロット番号を印字していたメーカーでは、熱処理後にインクが消えたり読み取りにくくなったりする問題を抱えていました。ファイバーレーザーのMD-Fシリーズを導入したところ、深彫り刻印により熱処理後も印字が鮮明に残るようになり、追跡性が向上しました。3-Axis制御によって湾曲面でも一定の深さで刻印できるため、加工精度が安定し、PLCとの連動でロット番号の自動生成や品番切り替えも効率化されました。これによりインクやノズル清掃の手間がなくなり、ランニングコストの削減につながったほか、品質不良の追跡が容易になり保証対応にかかる時間も短縮されました。
4. 導入事例②:医療機器メーカー
白色樹脂で作られた医療用チューブやカテーテルには、ロット番号やUDIコードを高コントラストで印字する必要があります。従来のレーザーでは黄変や焦げが発生する問題があったため、UVレーザーのMD-Uシリーズに切り替えたところ、熱影響の少ない微細加工が可能となり、見た目の品質が安定しました。クリーンルーム対応の筐体や排気システムと組み合わせることで衛生環境にも対応し、2次元コードの読み取り精度が向上したため、ロット管理や回収の迅速化にも寄与しました。また、刻印工程が自動化され、人為的なミスが減少しています。
5. 導入事例③:食品・日用品パッケージ工場
大量生産ラインの紙箱やフィルムへの賞味期限や製造コードの印字では、インクジェットヘッドの目詰まりやインク補充によるライン停止が問題でした。CO₂レーザーのMD-TシリーズやML-Zシリーズに置き換えたことで、非接触で高速な印字が可能となり、インク補充が不要になったため長時間の連続稼働が実現しました。3-Axis機能によってライン上の高さズレが自動補正され、カメラ検査システムと連動することで印字欠けを即座に排出でき、全体の設備効率が向上しました。
6. 導入事例④:電子部品・基板メーカー
プリント基板やコネクタ、フレキシブル配線板(FPC)などには、ごく小さなスペースに高精度の2次元コードを刻印する必要があります。ハイブリッドレーザーのMD-Xシリーズを採用した企業では、高出力と短パルス制御により微細なマーキングとスピードを両立し、部品の高さばらつきにも自動で焦点を合わせることで安定した刻印が可能になりました。これにより、極小コードであっても読み取り精度が向上し、部品単位でのシリアル管理が実現したほか、部材切り替え時の段取り時間も短縮されました。
7. 導入事例⑤:建材・工具メーカー
金属工具や建材にブランドロゴを表示する際、従来のシールやパッド印刷では剥がれやすさやデザインの制約が問題になっていました。深彫り用のMD-Fシリーズと多用途に対応するMD-Xシリーズを組み合わせることで、CADデータから読み込んだロゴを自由に刻印でき、曲面にも均一に印字できるようになりました。これにより製品の外観品質が向上し、ブランド価値の訴求につながったほか、シールやパッド印刷を廃止したことで資材コストや環境負荷が削減されました。
8. 導入ステップと成功ポイント
レーザーマーカー導入を成功させるには、現状の課題を整理し、印字対象の素材や必要な情報量、生産タクトや品質基準を明確にした上で、実機でサンプルテストを行い最適な波長やモデルを選定することが重要です。ライン設計ではレーザー安全規格や排気システムの検討、PLCやカメラとの通信方式などのシステム連携も確認します。導入後は試運転と印字品質基準の作成、保全体制の整備を行い、定期的なレーザー出力の監視や読み取り率のモニタリングを通じて改善サイクルを回すことがポイントです。成功のコツとしては、素材とレーザー波長のマッチングを押さえること、3-Axis機能を活用して治具簡素化を図ること、印字だけでなく読み取りまで含めて品質を設計すること、ランニングコストや保全性を可視化して投資効果を明確にすること、そして安全規格や業界規格を遵守することが挙げられます。
9. よくある質問
インクジェットからレーザーへの置き換えでは装置のサイズや安全対策が異なるため、単純に装置を入れ替えるだけではなくライン設計の見直しが必要になる場合があります。また、金属と樹脂を1台で印字したい場合はハイブリッドレーザーを検討できますが、波長適合性の確認が必要です。レーザーマーカーは非接触印字で消耗品が少ないものの、光学系の清掃や排気ダクトの点検など定期メンテナンスは欠かせません。
10. まとめ
キーエンスのレーザーマーカーは、3-Axis制御や豊富な波長のラインアップ、外部検査装置との連携機能により、従来の印字方法では解決できなかった課題に対応します。各導入事例が示すように、トレーサビリティの強化、ランニングコストの削減、品質やブランド価値の向上といった経営面のメリットにも直結します。自社の課題を整理し、適切なモデルと運用方法を選定することで、レーザーマーカーは単なる印字装置ではなく、生産性向上や品質改善につながる設備となります。導入前のサンプルテストやシステム設計、メンテナンス体制の整備といった事前準備を徹底し、現場に合わせた総合的な最適化を行うことが、導入成功の鍵となります。